今求められる50代・60代とは
今求められる50代・60代とは~公認会計士・税理士編~
年金受給年齢、定年再雇用制度の再整備等、今世の中は労働に関して大きな壁に突き当たっています。雇用される側としてもどうなるのかわからない将来に向けて、できる限り長く働きたい方が増えていると感じています。特に士業においては資格の独占業務権があるので、人によっては70歳以降になっても現役バリバリで事務所運営をしている方は多くいらっしゃいます。今後はこうした風がより強くなるでしょうし、世の中の動きに沿った、今求められる50代以降の士業(公認会計士・税理士)の転職市場についてお話したいと思います。
公認会計士・税理士の方から多くご相談される内容とは
キャリアは人それぞれですが、ご相談内容の多くは、
- 監査法人で監査業務をしてきましたが、今後は税務に関わっていきたい。
- 今後は非常勤で週3日程度の監査(または税務)をしたい。
- 代表がご高齢で縮小傾向のため、50代前半の今遅くなりすぎないように早めに相談しに来たつもりですが、まだ応募できる求人はありますか?
- 体力的に今の残業時間に耐えられず、もう少し改善したい(長く勤めたいから余計に)。
- 今の法人を定年退職しました。資格をもっており、若い頃事務所にいたので今後は資格を生かしてできる限り勤められるまで働きたいです。採用が可能な先はありますか?
といった内容です。
かつてはゆっくりのんびり働きたい、というご相談内容が大多数でしたが、ここ最近の傾向としては、「今後も長く勤めたい」「経験を生かしたい」といった積極姿勢が備わってきており、やはり時代と共に「どのように働いていきたいか」は変わってきています。
では採用側はどう考えているのでしょうか。ご自身の希望だけでは採用は決まりません。採用側の気持ちについても知っておくとより市場が見えてくると思います。
採用側の気持ち~どういうニーズがあるのか
「どのぐらいのご経験があるか」で士業の採用状況は大きく異なってきます。
※今回は士業の中でも公認会計士・税理士(資格者以外の実務経験者含め)についてお話したいと思います。
1.公認会計士の場合
中堅中小監査法人、中堅税理士法人では常にどこかでニーズがある印象です。20代・30代の若手層に向けた求人数と比較すると50代以降の方に向けた求人は数としては多くはないですが、年々50代以降のご経験者層を積極的に採用したい法人は増えてきています。
1-1.中堅中小監査法人の転職状況
もう少し詳しくお話をすると、中堅中小監査法人の場合は、「非常勤」もしくは「品質管理」のポジションで転職される方が多いです。
その方々のキャリアはBig4監査法人、中堅監査法人、事業会社経理、金融機関、コンサルファーム等様々です。
共通事項としてこれまでのキャリアの中で
- 監査のご経験が10年以上
- 必ず一度Big4にいたことがある
公認会計士の資格をお持ちの方であれば必然的な数字ではあるかと思いますが、やはり「10年以上の監査経験」・「資格をお持ちでBig4の水準を知っている」といったことは質の高さとイコールし、その「質」を中堅クラス以下では必要としています。
さらにいうと、こうした監査経験が豊富な方でしたら今は求人が出ていなくても各営業担当から法人側へのご提案でお話が進むことも少なくありません。
1-2.中堅税理士法人の転職状況
そして、もう一つの可能性としては中堅税理士法人です。中堅税理士法人はIPO支援、M&A、再生などのコンサル案件を多数対応しているため、公認会計士の方々の財務会計スキルを活かしやすい環境です。
但し、年収面が初年度はどうしても数百万円単位で下がってしまうことが多いので、その点を如何に初年度は許容してご自身のパファーマンスで上げていく気概を持つかどうかがポイントです。中堅税理士法人は若手の方も多く在籍しているので、個人プレーだけでなく、若手層に対してのリーダーシップを発揮頂きながら、動けるかどうかという能力も大切です。また監査経験だけでなく、税務のご経験もお持ちの方であれば、中堅と言わず、10名規模の事務所でもポジションが生まれることは結構あります。
採用側としては上記の通り、公認会計士で監査経験をしっかり積み重ねてきた方の財務会計スキルを事務所に取り込みたいですし、また周囲を巻き込んだマネジメントスキルがある方ですと尚可です。また非常勤でも費用対効果は十分図れるので、面接を希望される確率が高まってきています。
2.税理士(税務業界)の場合
公認会計士の市場と異なることとしては、当然ですが資格をお持ちでない方も経験があれば採用枠があることです。但しポイントは公認会計士同様「経験値」です。
まずは税理士(税理士有資格者)について、弊社でご支援実績が多い方々の特徴を簡単にまとめます。
- 税理士資格をお持ちで事務所経験が5年以上ある方
- 事務所経験5年以内の場合でも「事業会社での申告書作成経験+英語力+代表との相性」が2つ以上当てはまる方。
- 一つ一つの在籍期間が長い方。
※採用側としては長期就業がイメージしやすいのでより書類選考が通過する角度があがります。
但し、専門性(=ご経験値)がものをいう業界でもあるので、社数が多くなっている方でも事務所経験が通算して10年以上あると話は異なってきます。
といったように、公認会計士とは少し違った傾向があるようにお見受けしています。
2-1.人手不足により採用活動が活発だが…
実は本傾向はここ2~3年で出始めた傾向です。理由としては、人手不足が影響しているからです。税理士業界は士業の中でも特に人手不足となっているので、採用は最も活発的だと言えます。かつては経験社数が5社以上あると正直「転職が多いね・・」と採用に非積極的だった業界なのですが、採用ハードルは正直例年よりも下がってきていると言えます。しかし、留意頂きたいことは人手不足でも専門性高いお仕事なので、採用時には「その方の仕事に対する姿勢・意識」「お人柄」は厳しく見る業界でもあり、特にご年齢が高い方であればあるほど、その点に対しての選考目線は変わっていません。税理士の方に対してはクライアント対応をお任せしたい事務所が多いので、円滑なコミュニケーション能力、責任感といった、経験値に加えた”お人柄選考”は今後も続くでしょう。
2-2.税理士科目合格者の転職状況
次に、科目合格者についてお話します。税理士と正直そう大きく違いはないのですが、資格をまだお持ちでない分、「10年以上の事務所経験」は必須と言えます。事務所の方針にもよるのですが、資格をお持ちかどうかで年収面が変わってくるので、経験値と年収が比例しないことの方が多いです。採用側としたら、経験が10年以上ある方は大変貴重です。しかし、事務所内には資格を持ちながら働いている方がおり、やはり名刺に「税理士」と書けるかどうかは大きいです。そのため年収をその事務所基準に合わせて頂ける方で、手を動かすことを苦とせずに長く勤めていきたい姿勢が伺えると、採用側としても入社後の社員としてのイメージがつきやすく、複数社から内定を頂くことがあります。
税理士も科目合格者も共通点はその方の姿勢です。採用側も転職市場が人手不足だからこそ、長く勤めて頂ける方で、安心してお客様対応をお任せしていける方を採用したいお気持ちがあるのかと思います。
まとめ
※イメージ:専門性度合がわかり→お任せしたい仕事が決まり→それが年収・条件に紐づき決定
士業に限らず他の業界にも言えることですが、50代・60代の方々は、多くのことをご経験されていると思います。「ご自身の経験がどれぐらい専門的なのか、そしてそのスキルが採用側への貢献につながるか」を整理することで、末永くお勤めできる法人へ転職する確率が上がります。
転職活動は双方のニーズが一致しないと進まない為、自分自身の譲れない条件と転職希望先のニーズを理解することも大切です。
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